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島田流「価値組」の法則 [Business]

経営者のモチベーションを保つ秘訣

  前回は厳しい経営環境下で、いかに経営者が社員の意欲を高めるかについてお話ししました。今回は、社内外の厳しい評価を受けている経営者が、何をモチベーションとして経営に向き合っているのか、私の考えをお話ししたいと思います。

  私が考える経営者としてのモチベーションとは、自分がリードしている企業が継続的に成長し続けることです。つまり、日本ユニシスにおける私の役割とは、この会社が短期はもとより、中長期に活性化して成長軌道に向かう環境や、安定した収益基盤を作ることに全力を尽くすことだと思っています。

  それを自分が経営に携わっている間に実行していくことは当然ですが、企業は5年も10年も、それ以後も成長し続けていかなければならないという前提で考えるべきです。私も日本ユニシスのトップの座をいずれ後任者に譲ることになりますが、それ以降も日本ユニシスが成長していく姿を見たいと願って、そのための施策を日々実行しています。

▼経営は指揮者や野球の監督に似ている

  そのためには、一時的に社員から不満や批判を受けても、経営者として強い意志と信念を持って改革の推進を継続することが重要です。反対する“異分子”は、改革が厳しければ厳しいほど強くなり、数が多くなるのは当然のことでしょう。多くの人は現状維持が最も快適だからです。

  経営者が意志を貫く拠り所は、企業が本当に良い方向に進んでいき、良い結果が出た時の達成感や、社内外から賛同の意見や評価を得た時の自己満足ではないでしょうか。

  オーケストラで言えば、交響曲を指揮している指揮者が自分の思うようなハーモニーを生み出せた時の喜びと似ているかもしれません。あるいは野球チームの監督であれば、監督の指示と選手の動きが連動して勝利を得た時の喜びとか、その喜びを観客と共有できた時に感じることと似ているように思います。

  私は日本ユニシスがIT(情報技術)サービスのリーディングカンパニーへと向かっていくために、今まで全力投球してきました。少しでも理想に近づき、いずれ私が退いた後にも成長し続けてくれれば最高の幸せです。その目標に向かって、何事にも常に「前向きに、明るく、逃げず、知ったかぶりせず」、そして「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」の精神で一生懸命に取り組んできました。

▼「自分自身を励ます」工夫も重要

  これは経営者に限らずビジネスパーソン全般に言えることですが、自分が高い目標を立て、それを達成し、上司や経営者から評価してもらった時が、最も充実感を感じるのではないでしょうか。

  評価されることで、給料が増えたりポジションが上がったりするのも重要なモチベーションです。しかし、自分が懸命にやっても誰も評価してくれない時もありますし、手柄を人に取られることもあるかもしれません。その時に「評価されなくても、やるべきことはやったんだ」と自己満足できれば、挫折した時にギブアップしないで済むのではないでしょうか。それは、ビジネスパーソンにとって必須の心構えだと思います。

  私は、この高杉晋作の辞世の句を座右の銘としています。

  「おもしろき、こともなき世をおもしろく すみなすものは心なりけり」

  仕事が面白くないことが通常ですが、「世の中はおもしろいはずなのに…」と受け身に思った瞬間から、道は閉ざされてしまい失望の連続になってしまいます。「それなら自分自身の手で世の中を面白くしてやろう」と思えば、世の中は必ず面白くなるものです。

  私は三井物産のメキシコ駐在時代に、取引でトラブルに巻き込まれ、メキシコの拘置所に違法に約180日間も拘留された経験があります。苦悩の日々を過ごす中、獄中で最初に読んだ日本語の書物が、古川薫さんの『高杉晋作』でした。

「おもしろき、こともなき世をおもしろく すみなすものは心なりけり」

という句のお陰で、絶望感と悲痛な思いから抜け出すことができました。私にとって、一生忘れられない意味深い名言です。

  ビジネスパーソンが日々、前向きに働くためには、自分自身を励ます「Encourage Myself(エンカレッジ・マイセルフ)」が一番重要です。苦しい時には、とにかく「前向きに、明るく、逃げず、まずは一歩前へ出ること」。それが問題解決、状況を打開する道だと思います。それを実行していくことが、経営者にとってもビジネスパーソンにとっても、大切なことだと思います。

(島田 精一=日本ユニシス社長)

2005.04.13 NIKKEI BP


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