正平調 [コラム]
正平調
きのう、本紙は満百歳になった。「百」という字を形づくる白(ハク)は、博(ハク)に通じ、ひろいという意味がある。転じて大きい数を表す。「一より数えて百に至れば、ひとまず明確によびあげ、また初めに返るゆえに、一と白を合わせてその義を示す」と辞書にある。
百年という長い年月、地域の新聞として愛し、育ててくださった読者のみなさんにまずお礼を申し上げたい。同時に百年をひと区切りにし、また初めに返る心構えで日々励みたいと思う。
百年の間に、本紙の記事もずいぶん形を変えた。短評欄と呼んでいたコラムも例外ではない。記録をたどると、創刊三年目の明治三十三年三月二十三日の一面に登場する「粉々録」が原形らしい。その後「眼前口頭」「天語人語」などと改題を重ねて、「正平調」に落ち着いたのは昭和九年一月五日。
「正平調」は「せいへいちょう」と読む。「正平」は「厳正公平」。「調」は中国の詩「清平調」から採った。この詩は、牡丹(ぼたん)の花のように華麗に表現するのを特色とした。したがって「正平調」は、「厳正公平に、しかも華麗に表現する」との意味がある。名前が大きすぎて、非才にはつらい。
書いてはうめく毎日だが、支えは読者のみなさんの反応だ。難病で寝たきりの女性からいただいた、はがきは忘れられない。「もう体力がないので、朝一番に正平調の短い一章を読むのがやっとですが、これが生きる力になっています」。
読者の視線を感じ息づかいを聞く。そんな姿勢で、「正平調」はきょうからの新たな百年も書き継ぎたい
正平調
1998/02/12 神戸新聞
2006-08-11 09:57
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