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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-6 [Others]

(6)日本への核攻撃もある

 【北京・中央軍事委員会 2009年7月29日】

 日本人スパイ事件を担当する中国共産党政治局員は興奮していた。

 「主席! 今日の裁判の開始は成功でした」

 胡金涛はにこにこ顔の政治局員を抑えるように告げた。

 「まだ小さな第一歩だ。欧米メディア、とくにニューヨーク・タイムズがどう報じるかをみよう」

 胡主席は次に人民解放軍の海軍将官に話しかけた。

 「この裁判終了の一日後から行動を起こせるようにしてほしい」

 「はい、日本の航空管制網と証券取引所、政府機関のコンピューター・システムを破壊できます」

 「だが同志、日本に真の屈辱を与えるには当初の計画を変え、コンピューター撹乱以上のことをしなければならない。ある程度の血を流させねばならないのだ」

 「流血はどのぐらいに?」

 「当面は釣魚島(尖閣諸島)の占拠を命ずる。占拠したら島に基地を建設し、すぐに島周辺に石油開発の施設を築くように」

 最初の政治局員がまた発言した。

 「裁判はどう終わらせますか」

 「有罪判決だ。ただ日本人被告の一人は無罪とし、残りは死刑だ。日本の首相への懲罰も必要だな」

 胡は別の政治局員に話しかけた。

 「金正月同志への援助を増すことはできるか」

 「はい、10パーセントの増加は容易です」

 「金総書記にそう伝え、日本の北朝鮮への侵略を非難させよう。北朝鮮の軍隊を厳戒態勢につけ、南北境界線近くに結集させることも指示せよ」

 【ホワイトハウス 同年8月2日】

 国家安全保障会議のメンバーたちは静かに座り、女性大統領クラターバックの日本の首相との電話の会話を聞いていた。

 「首相、米国としてはこれ以上のことはできません。米国政府の抗議はすでに駐米中国大使に伝えました」

 日本の首相は自分を抑制するようにして話した。

 「無実の日本国民の処刑が始まるのです。抗議だけでは困ります」

 「ではなにをしろというのですか。日本の海上部隊がいま尖閣付近で実施中の軍事演習は中国を挑発するだけでなく東アジア全域を不安定にしている。北朝鮮が大部隊とミサイル戦力を動員している。正気ですか。あなたの不要な挑発が国際的危機を生んでいるのです」

 「危機についてはわかっていますよ」

 「北朝鮮の駐米大使が金総書記の演説の内容を予告してきました。もし日本が東シナ海で挑発を続けるならば、日本を攻撃するというのです。彼はむら気の人物です。日本への核攻撃もありえます」

 「日本ほど核兵器の恐ろしさを知る国はない。私自身も長崎の近くで生まれました。だが中国当局は無実の日本国民を殺し、日本領土に侵略しようとしているのです。米国はそれを座視するのですか」

 「首相、米国は無人の小島やスパイ裁判のために中国と戦争する意図はありません。みな日中両国間だけの問題です」

 女性大統領は電話を切り、室内をみまわして語った。

 「さあ、このくだらない危機にどう対応するか。やはり国連安保理への提訴ですね」

 「そのとおりです」

 国務長官が応じると、国防長官が声をはさんだ。

 「米国は日本と安保条約を結んでおり、中国が尖閣を占拠すれば、日本を防衛する責務があります。そのうえ尖閣が行政上、帰属する沖縄には米軍基地があり、尖閣攻撃は米軍攻撃に等しくなります」

 「では沖縄から米軍を撤退させればよい。米国は小さな島のために戦争はしません。ではこの会議も終わります」

 そして大統領は報道官の女性に声をかけた。

 「ジーナ、この危機についての国内世論調査のデータを早く集めてちょうだい」(つづく)

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/21 10:00)

 


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