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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-1 [Others]

(1)「日本を叩けばよい」

【ホワイトハウス 2009年1月20日】

 「どこの島ですって?」

 新しい米軍最高司令官の大統領はいらだちを隠さなかった。前年11月の選挙に勝って米国初の女性大統領となった民主党リベラル派のドロシー・クラターバックは就任のパレードを終え、日本の首相からの祝いの電話に出ていたが、会話はぎこちなかった。

 首相の声は珍しく感情をあらわにしていた。

 「尖閣諸島ですよ、大統領。沖縄の近くにあり、周辺に豊かな油田やガス田があります。日本領土ですが、中国が領有権を主張しています」

 「その島のなにが緊急なのですか」

 「はい、尖閣諸島の至近海域で中国海軍がロシア軍の支援を得て、大演習を始めました。中国は武力で尖閣を占拠しそうなのです」

 「わかりました。こちらも検討しましょう。数日後にまた話しあいましょう」

 女性大統領は電話を切ると、そばにいたCIA(中央情報局)長官らに顔を向けた。長官らは前共和党政権のメンバーで、数日後にはもう職を離れることになっていた。

 「中国側が今夜の私の就任祝いパーティーの前に軍事攻撃をかけることはないでしょう。私の新政権は中国とことを荒立てる方針はない。中国は必ず責任ある道を選ぶでしょう。もうこの件ではなにも報告しないでください」

 CIA長官が反論した。

 「大統領、いや中国はあなたの出方をテストしているのです。前大統領が就任後、まもなく米軍の偵察機が海南島で強制着陸させられたことを覚えていますか」

 「中国がなにを求めているのか、私はよくわかっています。前政権はそれがわからなかった。私は選挙戦を勝ち抜いたのと同じ方法でうまくジャップと中国人とを扱いますよ。まあ、みていなさい」

【北京・中央軍事委員会 同年6月1日】

 軍事委主席の胡金涛は人民解放軍の幹部の将軍連に問いかけた。

 「人民を団結させ、党や国家への忠誠を高める最善の方法はなにか」

 将軍の一人が答えた。

 「中国人は誇りの高い民族です。人民が国内の失業や貧困から目をそらし、自国への帰属意識を高めるには周辺諸国を従属させ、中国の覇権を誇示することです」

 他の将軍が反論する。

 「しかし周辺諸国と戦争をするわけにもいかないでしょう」

 「いや、戦争ではない方法で一国を屈服させれば、他の国にもドミノ効果がある」

 胡が口をはさむ。

 「そうか、一国を服従させれば、他の国もその例に従うわけか。だがその一国をどこにするか。実質的なパワーと象徴的な重要性を持つ国でなければならないが」

 人民解放軍の総参謀長がおもむろに答えた。

 「日本です」

 胡がすぐに同意した。

 「そうだ。日本だ。日本を叩けばよい。日本を軍隊で侵略する必要はない。歴史問題で叩いて、天皇に中国への侵略について公式謝罪をさせる。そうすれば中国人民の誇りや民族意識は急速に高まるだろう。日本に屈辱を与え、服従させるための具体的な計画を3日以内に提出するように」(つづく)

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/16 10:00)

 
【メモ】来春にも日本語版刊行 中国人民解放軍の実態を近未来小説として描いた「ショーダウン(対決)」という書が米国で刊行された。

著者は先代ブッシュ政権の国防副次官ジェド・バビン氏とレーガン政権の国防総省動員計画部長エドワード・ティムパーレーク氏で、レグネリー社刊。日本語版は来春にも産経新聞出版から刊行される。

中国が戦争を始める展望がフィクションとして書かれるなかで「2009年に中国のミサイル攻撃で新たな日中戦争が始まる」という章がある。その章を中心に同書を抄訳で紹介する。

 


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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-2 [Others]

(2)「靖国参拝参拝を阻止せよ」

【ホワイトハウス 2009年6月25日】

 米軍統合参謀本部議長は閣議に出て、2時間を過ごしたが、安全保障問題がほとんど論じられないまま、クラターバック大統領が閉会を宣言しそうなのに気づいた。軍人の同議長は発言しようとした。

 「ちょっと一言、中華人民共和国は危険な存在--」

 大統領は閣僚に中国の正式呼称をできるだけ使うことを命じていた。同議長は中国の野心的な軍拡について課題を提起しようとしていた。だが国務長官にさえぎられてしまった。

 「いや、中華人民共和国は昨年の北京五輪の成功にまだひたってますよ」

 「まさに北京五輪にこそ中国当局がエネルギー供給を優先した結果、一般国民は貧しく、飢えるようになってしまったのです。当局は国民の怒りと不満を外にそらすためにアジアで軍事行動を積極果敢にしようと意図しています」

 「将軍、中華人民共和国を恐れることはありません」

 女性大統領はため息をつき、鼻メガネごしに統合参謀本部議長をにらみながら、議長の発言を抑えた。が、同議長は続けた。

 「ASEAN(東南アジア諸国連合)との軍事使節団相互派遣の要請にわが方はまだ答えていません。早く応じるべきです。中国の脅威を考えると、小国をみすてないという原則の明示は重要です」

 しかし大統領は即座に反論した。

 「中国も米国の友人です。投資と貿易のパートナーです。その中国に懸念を抱かせるような軍事使節の相互派遣には反対します。中国を挑発する必要はない」

【北京・中央軍事委員会 同年7月1日】

 胡金涛主席が将軍たちに告げた。

 「日本の首相が来週、靖国神社への参拝を計画しているが、わが政府としてその中止を求める外交要求をすることにした。首相がもし参拝すれば、中国人民を侮辱することになる。中国人民が日本のこの好戦的な行動をどう受けとるか、保証はできない。実際に参拝があったとき、どうするか。またその際に協議をしよう」

 胡はここまで語り、書類の束を小脇に抱えて、足早に去った。

【ホワイトハウス 同年7月6日】

 大統領が日本の首相に電話で語りかけた。

 「ご機嫌はいかがですか、首相。こちらの独立記念日の祝賀に参加していただけず、残念でした」

 「元気です。しかしいまの日本は不安に満ちています。その原因である中国について、お話したいのです」

 「中華人民共和国は最近、静かですね。なにが不安なのですか」

 「わが国ではもうすぐ先祖の霊を悼むお盆の季節です。私はこの時期に天皇のご意向をも受けて、靖国神社に参拝するつもりです。これまで私たちの参拝のたびに中国側が強く抗議をしてきた。今回は天皇ご自身もお参りをされる予定です」

 「なぜ参拝をするのですか。第二次大戦で戦犯とされた人物たちの霊も祀られているのでしょう?」 首相は一瞬、沈黙し、少し待ってから大統領に語りかけた。

 「あなたの懸念は感謝します。しかし戦争で死んだ250万もの日本国民の霊を祀る神社に日本の首相が参拝することを中国の政府が禁じることはできません」

 「でも中国を挑発することもないでしょう。参拝はやめたらどうですか」

 「国民が首相の参拝を求めているのです。でも参拝の結果、中国がミサイルを撃ってきたら、米国はどうしますか。中国はすでに尖閣諸島を脅かしています。日本国民も中国の侵略を恐れています」

 「では火をつけるようなことはしないでください」(つづく)

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/17 10:00)

 
【メモ】中国人民解放軍の実態に切り込んだ近未来小説「ショーダウン(対決)」は米国で出版され、日本語版は来春にも産経新聞出版から刊行される予定。本欄では「日中戦争」の章を中心に同書の抄訳を紹介している。

 


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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-3 [Others]

(3)米国は動かない

【横田基地・米第五空軍司令部 2009年7月8日未明】

 「いやあ、これは大変だな」

 マット・オバノン空軍中佐は重い双眼鏡を胸に下ろして、ため息をついた。格納庫の背後に立って、上空をみつめていたのだ。

 「中佐、驚くことはありません。ミサイルは数基、せいぜい最大限10基ですよ」

 「そうだな、私も9か10まで確認した」

 中国のミサイルが明るい月に照らされた日本上空を通過したのだった。事前にその動きを知らされたオバノン中佐は部下とともに横田基地からその飛来を双眼鏡でとらえていた。

 日本政府も中国からこの時間帯に上空を越えるミサイル発射の事前警告を受けていた。中国側の軍事的威嚇だった。

 「この発射はどんな意味があるのかな」

 中佐が部下にたずねた。

 「中国は前にも同様のミサイル発射をしており、それほど重大な意味はないでしょう。ただし日本側はきわめて深刻に受けとめています。それは当然ですが」

 中佐はうなずいて格納庫横のオフィスにもどり、暗号化されたパソコンの通信をチェックした。

 「おっ! こっちのほうが大事件だ。中国海軍がロシア軍と合同で実弾発射の演習を開始した。沖縄の南西にある尖閣諸島の至近海域だ。ここでは中国は半年前にも演習をしたが、今回は規模がずっと大きく、島への上陸の態勢をとっているという」

【北京・中央軍事委員会 7月8日夜】

 胡金涛主席が将軍たちを見回し、口を開いた。

 「さあ、日本に対する戦争の無血部分をいま始めるかどうかだ。司令官、準備は完了したか」

 軍事委では日ごろみなれない海軍の制服を着た将官が緊張した口調で答えた。

 「はい、主席、いつでも開始できます」

 この将官は中国人民解放軍の秘密機関「サイバー戦争本部」の司令官だった。この本部は広東省の遠隔地の地下深くに設置されていた。司令官は報告した。

 「主席のかねての指示どおり、まず最初に東京証券取引所のコンピューターシステムを特殊ウイルスで麻痺させます。この余波は欧米の証券、金融のシステム全体へと広がります。そして次に日本の軍事防衛の通信ネットワークを崩壊させます。さらに主席の命令次第で日本の配電網を瓦解できます。日本国全体が機能を停止し、闇の中で孤立することになります」

 「孤立?」

 「はい、もし主席からの命令さえ出れば、わが衛星攻撃兵器が米国や欧州の通信衛星、航行誘導衛星を破壊します。欧米の人工衛星が使えなくなれば、日本はまったくの無防備となり、孤立するわけです」

 胡金涛は満足げにうなずき、やや間をおいて、将軍たちに告げた。

 「そうした行動をとれるのは、よいことだ。なにも日本を侵略して、征服する必要はない。だが、わが国が新たな支配力を行使する新周辺地域においては、日本でも、あるいは他の国でも、もし中国に逆らえば、瞬時に服従させることができるということなのだ」

 胡はさらに言葉をついだ。

 「米国は行動をとるまでに何日もちゅうちょするだろう。だがこうした形での日本の制圧には結局は抵抗しないこととなる。とくに私が米国大統領に中国が米国の通信網や配電網を破壊する能力を持っていることを伝えれば、米国は日本を救うためには、動かない。さあ、司令官、持ち場にもどりなさい。そして準備を進めなさい」(つづく)

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/18 10:00)

 
 【メモ】中国人民解放軍の実態に切り込んだ近未来小説「ショーダウン(対決)」は米国で出版され、日本語版は来春にも産経新聞出版から刊行される予定。本欄では「日中戦争」の章を中心に同書の抄訳を紹介している。

 


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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-4 [Others]

(4)中国はどこまでやる?

 【ホワイトハウス 2009年7月10日】

 「各地の抗議デモは相互に連携しあっているのですか」

 女性大統領が質問した。毎朝、大統領の最初の執務となるインテリジェンス・ブリーフィング(情報説明)だった。危機はイスラム青年たちの暴動など欧州でも中東でも起きていたが、中国が話題を独占した。

 CIA長官が報告した。

 「中国のすべての主要都市で反日デモが起き、相互に連携しながら暴力的となっています。昨日のデモ参加者は推定2000万、人民解放軍が各地のデモを組織したことは確実ですが、その勢いを過少評価したようです。反日感情が各地で燃えあがっています」

 中国の今回の反日の契機は「日本人スパイ事件」だった。中国で働く日本人のコンピューター技師と農業専門家が中国の国家機密を盗んだ容疑で逮捕され、裁判にかけられていた。中国側の策謀だった。中国政府は同時に日本に対し尖閣諸島の放棄を求めていた。

 CIA長官が説明を続ける。

 「尖閣は無人の島ですが、全世界でも最も豊かな部類の石油と天然ガス資源の上に位置しています。胡金涛主席はテレビで日本に対し、その島の放棄とともに、南京虐殺からケネディー大統領暗殺まですべてについて謝罪することを求めています。とてつもない要求です」

 大統領が口をはさんだ。

 「で、中国はどこまでやる気なのですか」

 CIA長官は「日本側の石油と天然ガスの資源の獲得を目指すことは明白です」と答える。国家情報長官が「私たちはそんな情報は得ていないが」とさえぎる。CIA長官は「中国が日本にミサイルを撃つと威嚇していることは私たちみんなが知っています」と反論する。国家情報長官が「日本側も海上部隊と航空部隊を動員している」と述べると、CIA長官は「でも日本側の軍事力はたいしたことがない」と返す。

 すると、女性大統領が手をあげて、2人を制した。

 「要するに中国の意図はわからないということですね。いずれにせよ、そんなちっぽけな島に私たちはかかわっていられない。当面は静観です」

 と、室内の隅から太い声が発せられた。

 「中国の動向をもっと徹底して偵察する必要があります。尖閣への衛星偵察を強化し、同時に南沙諸島のような場所も監視せねばならない。南沙では中国がなにか新たな施設を築いているようです」

 国家安全保障会議の副補佐官ジム・ハンターだった。背広だったが、現役の海兵隊中将である。その落ち着いた語調に室内が圧せられた感じだった。

 「初めてまともな提案を聞きました。そうしましょう。すぐに国防長官を呼びなさい」

 女性大統領が命令した。

 【南沙諸島 同年7月24日】

 米海軍特殊攻撃部隊SEALの指揮官カリー・オバノン少佐は無線マイクにささやいた。

 「ヘッケルとジェッケル、現在地はどこか」

 「あなたのすぐ後です」

 そんな応答とともに、黒と緑に塗られた顔が二つ、背後の闇から現れた。2人とも格闘技の選手のようなSEAL隊員だった。

 「さあ、中国軍はあそこでなにをしてるんだ」

 「ボス、驚きです。CIAの情報はまちがい、中国人たちが建設しているのはホテルなどとはとんでもない。軍の司令部と訓練施設です。電子偵察の機器に加えて、対空ミサイルのSAMが5、6基、装甲車も6台、確認しました」

 「そうか、では偵察の任務達成だ。まもなく浮上する潜水艦でこの島を撤退しよう」

 「ちょっと失礼」

 2人の隊員は背後の茂みから手足を縛り、口を封じた中国軍兵士の体を引っ張り出し、手早く注射を打った。記憶を一時的に奪う薬だった。(つづく)

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/19 10:00)

 


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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-5 [Others]

(5)「宣戦布告に等しい」

 【ホワイトハウス 2009年7月26日】

 女性大統領は電話で日本の首相と話していた。

 「首相、あなたは私を中国に対して非常に不都合な立場に追いこみました。いったいなぜ中国を不必要に挑発したのですか」

 首相はやや声を高めて答えた。

 「挑発ではありません。それに不必要でもない。大統領、靖国神社を参拝し、戦没者を追悼するのは私の責務です。中国の反応こそ非礼であり、わが国への侮辱です。そのうえ参拝への抗議とからめて同じ時期に日本国民をスパイ罪で公開裁判にかけるとは、死者生者を問わず日本人への侮辱です」

 「ちょっと待ってください、首相。スパイ行為はどの国でもしています。いまはとにかくその罪を認め、謝罪し、当事者の釈放を果たして、当面の危機を避けたらどうですか」

 「しかし彼らはスパイではありません」

 「ではなぜ裁判にかけられるのですか」

 「大統領、彼らはコンピューター技師と農業専門家ですよ。彼らがなぜ中国に対しスパイ行為を働く必要があるのか。中国側から得たい技術などなにもありません」

 「私は昨日、胡金涛主席と話しました。主席はこの裁判を公正にすることを約束していました。しかし彼は中国人民が日本の侵略にものすごく反発していることを心配していました。あなたの靖国参拝が中国人の感情を過去の戦争にまでさかのぼらせて、あおったのです。胡主席は日本の首相の靖国参拝は宣戦布告に等しいとも述べていました」

 日本の首相は熱をこめ、すぐに応じた。

 「日本にも中国と同様に国民感情というのがあります。靖国参拝はだれに対する敵対的な意図もない。日本は仏教の国です。同時に神道を信じる国民も多く、神道への信仰は第二次大戦後、いまが最も強くなっているのです」

 首相は一気に語る。

 「大統領、私たちは中国が意のままに日本を恫喝することを許容はできません。もちろん戦争はいやです。だが中国は日本を侵略できる軍事力を有し、核兵器さえも使うことができる。だからこそ米国側に日本のミサイル防衛強化の措置を緊急に許可していただきたいのです。中国は日本に対し恐れることはなにもない。日本がどのように戦没者を悼むかを命令するとは、乱暴をきわめます。そのうえ中国はいまやアジアでの日本の合法的な経済権益までを否定しようとしている。日本は自国の経済や投資が外国勢力の人質にとられることは許せません」

 「しかし首相、中国はそのようにはみていないでしょう」

 「大統領、日本は平和主義の国です。先の戦争では十二分に教訓を得ました。しかし自国の防衛はせねばならない。私どもの国会はすでに中国の脅威への対応として防衛予算を倍増しました。イスラエルからF15、F16戦闘機をかなりの機数、追加で購入し、オーストラリアからは潜水艦3隻を調達する手はずをとりました。しかしいずれの購入にも米国の同意が必要なのです。同意してくれますね」

 女性大統領は一瞬をおいてから答えた。

 「はい、もちろんです。ただしパトリオット対ミサイル・システムとイージス対ミサイル護衛艦はまったく別ですよ」

 「いやいや、大統領、中国は過去1年間にもう3度も日本上空に向けてミサイルを発射しているのです。適切なミサイル防衛網に必要なそれらのシステムをすぐにでも売却してくれるよう切にお願いします」

 「議会の指導者たちと協議してみます。だが首相、約束はなにもできません。イージス護衛艦の建造は何年もかかり、パトリオットは米国側でもほとんどいま保有していないそうですから」(つづく)

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/20 10:00)

 


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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-6 [Others]

(6)日本への核攻撃もある

 【北京・中央軍事委員会 2009年7月29日】

 日本人スパイ事件を担当する中国共産党政治局員は興奮していた。

 「主席! 今日の裁判の開始は成功でした」

 胡金涛はにこにこ顔の政治局員を抑えるように告げた。

 「まだ小さな第一歩だ。欧米メディア、とくにニューヨーク・タイムズがどう報じるかをみよう」

 胡主席は次に人民解放軍の海軍将官に話しかけた。

 「この裁判終了の一日後から行動を起こせるようにしてほしい」

 「はい、日本の航空管制網と証券取引所、政府機関のコンピューター・システムを破壊できます」

 「だが同志、日本に真の屈辱を与えるには当初の計画を変え、コンピューター撹乱以上のことをしなければならない。ある程度の血を流させねばならないのだ」

 「流血はどのぐらいに?」

 「当面は釣魚島(尖閣諸島)の占拠を命ずる。占拠したら島に基地を建設し、すぐに島周辺に石油開発の施設を築くように」

 最初の政治局員がまた発言した。

 「裁判はどう終わらせますか」

 「有罪判決だ。ただ日本人被告の一人は無罪とし、残りは死刑だ。日本の首相への懲罰も必要だな」

 胡は別の政治局員に話しかけた。

 「金正月同志への援助を増すことはできるか」

 「はい、10パーセントの増加は容易です」

 「金総書記にそう伝え、日本の北朝鮮への侵略を非難させよう。北朝鮮の軍隊を厳戒態勢につけ、南北境界線近くに結集させることも指示せよ」

 【ホワイトハウス 同年8月2日】

 国家安全保障会議のメンバーたちは静かに座り、女性大統領クラターバックの日本の首相との電話の会話を聞いていた。

 「首相、米国としてはこれ以上のことはできません。米国政府の抗議はすでに駐米中国大使に伝えました」

 日本の首相は自分を抑制するようにして話した。

 「無実の日本国民の処刑が始まるのです。抗議だけでは困ります」

 「ではなにをしろというのですか。日本の海上部隊がいま尖閣付近で実施中の軍事演習は中国を挑発するだけでなく東アジア全域を不安定にしている。北朝鮮が大部隊とミサイル戦力を動員している。正気ですか。あなたの不要な挑発が国際的危機を生んでいるのです」

 「危機についてはわかっていますよ」

 「北朝鮮の駐米大使が金総書記の演説の内容を予告してきました。もし日本が東シナ海で挑発を続けるならば、日本を攻撃するというのです。彼はむら気の人物です。日本への核攻撃もありえます」

 「日本ほど核兵器の恐ろしさを知る国はない。私自身も長崎の近くで生まれました。だが中国当局は無実の日本国民を殺し、日本領土に侵略しようとしているのです。米国はそれを座視するのですか」

 「首相、米国は無人の小島やスパイ裁判のために中国と戦争する意図はありません。みな日中両国間だけの問題です」

 女性大統領は電話を切り、室内をみまわして語った。

 「さあ、このくだらない危機にどう対応するか。やはり国連安保理への提訴ですね」

 「そのとおりです」

 国務長官が応じると、国防長官が声をはさんだ。

 「米国は日本と安保条約を結んでおり、中国が尖閣を占拠すれば、日本を防衛する責務があります。そのうえ尖閣が行政上、帰属する沖縄には米軍基地があり、尖閣攻撃は米軍攻撃に等しくなります」

 「では沖縄から米軍を撤退させればよい。米国は小さな島のために戦争はしません。ではこの会議も終わります」

 そして大統領は報道官の女性に声をかけた。

 「ジーナ、この危機についての国内世論調査のデータを早く集めてちょうだい」(つづく)

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/21 10:00)

 


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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-7 [Others]

(7)北は韓国にも侵攻した

 【ホワイトハウス 2009年8月3日】

 中国の巡航ミサイルがついに日本に撃ちこまれた。日中の海上部隊は尖閣海域で戦闘を開始した。

 クラターバック大統領は日本の首相との電話会談で日本への同情と理解を伝えたが、行動はなにもとれそうもなかった。

 「首相、貴国にとっては手痛い打撃ですね。しかし死傷者は少ないようですが」

 「いや、巡航ミサイルは標的を巧みに選び、靖国神社が完全に破壊されました。ちょうどそのとき、大規模の参拝の儀式が催されており、数百人の民間人が殺されました。日本の海上自衛隊も莫大な被害を受けています。米国は日本の国土防衛を助けてくれるのですか。それとも日米安保条約はなんの意味もないのでしょうか」

 電話での会話は緊迫していった。

 「首相、私は米国の条約上の責務はよく知っています。しかし今回の事態はみなあなたの失態からではないですか。靖国神社を参拝して中国を挑発することは止めるよう告げたではないですか。中国側は米国の介入を許容しないと伝えてきました。首相、私はあなたに威圧されて、中国との戦争を始めるようなことはしませんよ」

 「大統領、もうこれは戦争なんです。中国側はいまこの瞬間も私たちを攻撃しています。弾丸や爆弾だけではない。ものすごいサイバー攻撃も受けました。日本の航空管制網や証券取引所、他の多数の電子システムが破壊されました。日本の経済ももう崩壊寸前です。軍事的にも中国が日本の防衛システムに同じような攻撃をかけてくれば、もう自衛隊も無力になります。中国はすでにわが国に降伏を要求してきました。この事態はもうとっくに戦争なのです!」

 「首相、米国としては国連の場で最大限の努力をしています。私たちはみな国連に頼らねばなりません」

 【北京・中央軍事委員会 同年8月10日】

 「主席、日本はまだ降伏しようとしません。わが方は日本の経済を機能麻痺にしました。政府機構も事実上の瓦解です。でも日本側はなお戦っています」

 胡金涛主席は人民解放軍の海軍将官からの報告を聞き、顔をしかめた。

 「米国はどう出てくるのか。日本側は日米安保条約の発動を宣言したのに、米国側は日本政府と話す以外、なんの行動もとっていないが」

 海軍将官は両手を広げて、答えた。

 「まさにナゾですね。でも主席が予測したとおりでもあります。しかし、わが方がもし沖縄を攻撃すれば、米軍も多大な損害をこうむることとなります」

 「それは賢明ではない。やはりまだ待つべきだろう。北朝鮮の金正月同志がすでに韓国に進攻したから、米国にとっても戦争状態となったわけだ。われわれが沖縄の米軍将兵を殺す必要もない。それに日本人どもはわが方がもたらした損害から回復することはできないだろう」

 「それはそのとおりです。だが日本人というのは頑固な民族です」

 「朝鮮からの戦況報告はどうか」

 「激戦が続いているそうです。米軍は増援部隊を本国から投入しています」

 「そうか--いまこそ沖縄の米軍を攻撃するときかも知れないな。米軍が他に注意を奪われている現状こそ好機となりうる」

 「はい、主席! そのとおりです」

 「よし、計画どおりに攻撃を開始せよ。米国はかなりの規模の軍隊を日本に駐在させている。それら部隊に決定的打撃を与えねばならない。そうすればあの大統領もさすがに行動を起こすだろう」(つづく)

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/22 10:00)

 


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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-8 [Others]

(8)核爆発が確認された

 【横田基地・米第五空軍司令部 2009年8月11日】

 「さあ、発進だ!」

 マット・オバノン空軍中佐は自分の指揮する飛行大隊の格納庫の前に立ち、部下たちがそれぞれの飛行機に向けて走るのをみていた。最後の乗員が搭乗機にたどり着くのを確認して、中佐も自分の機に乗りこんだ。3分後、中佐のB2ステルス戦略爆撃機は他のB2、3機に続いて滑走路を疾走し、未明の上空へと舞いあがり、護衛のF15戦闘機編隊と合流した。

 「ジェリー、アトキンス大佐に連絡して、全員が命令どおりに離陸したかどうかを確かめてくれ」

 オバノン中佐は乗機が3000メートルほどの高度に達したとき、インターホンで副操縦士に指示した。副操縦士は戦闘機に乗った飛行指令のアトキンス大佐と交信した。

 「全機全員が予定どおりに飛び立っています。戦闘機の先導で、われわれもレーダー探知の良好状態のまま飛行しています」

 「よかった。緊急の避難がうまくいってよかった」

 米軍の司令部は敵の動きをいち早く察知した。中国の大軍が海上を南下していた。沖縄方向へと動いていたが、米側は日本本土の米軍基地への攻撃も予測して、第五空軍に横田基地からの全機の緊急避難を命じたのだった。

 副操縦士はきちんと座って、計器類を点検しながら、オバノン中佐に語りかけた。

 「ボス、これからどうするのですか。第五空軍全部隊がいま空中にいますからね。おっと、最新情報です。中共の部隊が巡航ミサイルを多数、発射しました。目標は沖縄です。中共の戦闘機や爆撃機の編隊も沖縄に向かっています」

 副操縦士と中佐は同時に頭上のF15、F16の編隊をちらりとみあげた。彼らの乗った爆撃機は音速をはるかに超えて飛んでいた。

 「中佐、太平洋統合軍司令部がこちらの戦闘準備状況を知らせろと命じてきました。通常のトマホーク巡航ミサイルを装備しているだけだと答えておきました。こんご数時間は飛べますが、そのあとは給油が必要になります」

 「さあ、どんな命令が出るか」

 オバノン中佐はそうつぶやいたあと、ほんの少しだけ乗機の飛行方向を変えた。後続の3機のB2もそれに従った。

 沖縄には数千人の米海兵隊員がいるが、短時間のうちにその多くが死ぬのだろう。このB2が搭載したトマホークは日本に接近してくる中国軍艦艇を阻止できるかもしれない。米海兵隊員の一部を救うこともできるかもしれない。

 【ホワイトハウス 同年9月23日】

 「大統領!」

 クラターバック大統領は中国の軍事攻撃のショックからまだ完全には回復できないままだった。在日米空軍の地上の航空機をかろうじて緊急避難させ、戦闘能力を温存したことは一般からほめられた。それでもなお日米両国の航空部隊が多大な被害を受けた。だが中国の沖縄侵攻はどうにか反撃し、防ぐことができた。

 女性大統領は毎時間、国内世論調査の数字を熱心に読んでいた。大統領への支持率は戦闘での死者数が急増するにつれ、急降下していた。将軍連は女性大統領の優柔不断にいらだちを高め、敏速な決断を求めた。この大統領のだらしなさはマスコミにも流れたが、副大統領が自分の地位を守るために、ひそかに内部情報をリークしているのだろうと、大統領自身は信じていた。米国中が女性大統領への非難で満ち満ちていた。彼女は単に平和を守ろうとしただけなのに。

 と、女性大統領の思考を北米航空宇宙司令部(NORAD)の司令官からの電話が遮断した。

 「大統領、いま日本の大阪で核爆発が確認されました! 大統領、そして国防長官あての緊急報告です」(つづく)

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/23 10:00)

 


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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-9 [Others]

(9)作戦目標は北朝鮮

 【ホワイトハウス 2009年9月23日】

 北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の司令官はクラターバック大統領にさらに告げた。

 「大阪市での核爆発は北朝鮮から発射された核ミサイルであることを確認しました。間違いありません。核爆発の規模は10メガトンほどだと推定できます。大阪の市街は完全に消滅しました」

 「オー・マイ・ゴッド! どうしてそんなことが-」

 女性大統領は電話を切ると、文字どおり悲鳴をあげた。何度も悲鳴を断続的にあげ続け、大統領執務室に長身の男性が入ってくるのをみて、やっと口を閉ざした。

 「大統領-」

 「なんなのよ、将軍。北朝鮮が大阪に核攻撃をかけたことは知っているの?」

 背の高い男は国家安全保障会議の副補佐官だった。現役の海兵隊将軍の彼は軍服を着ていた。その軍服の胸から肩に数々の武勲を讃える勲章やリボンが飾られているのを女性大統領は初めてみた。将軍は太いが柔らかな声で応じた。

 「まさにそのために参上したのです」

 「日本は明日、降伏するそうです。将軍は知ってますか」

 「いえ、知りませんでした。だがわれわれのするべきことはまだ終わっていません。もう全員がそろっています。統合参謀本部議長、国防長官、国務長官、そして国家安全保障会議の全員です。大統領はフランクリン・ルーズベルト大統領をかねてから尊敬していましたね。ルーズベルト氏だったら、いまの状況下でどうするか、考えましょう。コーヒーはいかがですか。そして2人でちょっと廊下を歩きながら話しましょうか」

 大統領は大きなイスからやっと立ち上がった。

 「OK、ジム、そうしましょう」

 【西太平洋水深約300メートル 米海軍原子力戦略潜水艦「アラバマ」艦内 同年9月24日】

 ポーカー・ゲームはもう終わりそうだった。乗組員たちはまもなく就寝の予定だった。米海軍特殊攻撃部隊SEALのカリー・オバノン少佐はトランプのカードをまとめ、立ち上がって伸びをした。と、艦内に警鐘がひびきわたった。スピーカーから声が流れる。

 「全員、戦闘態勢につけ。ミサイル発射準備、全員、配置につけ」

 オバノン少佐の部下のヘッケルとジェッケルが少佐の顔をみた。

 「ボス、いったいなんですか」

 「わからない。艦長室にいってみる。二人はSEAL小隊を集合させておいてくれ」

 オバノンは艦長室へと走る途中、潜水艦が急上昇するのを感じた。艦長室脇の戦闘司令所にいた潜水艦長はオバノンがこれまでみたことのない緊張した顔つきだった。

 「オバノン少佐、まあそこで待機して、これからの一大作戦をみていてくれ」

 「なにをするのですか、艦長」

 「たいしたことはない。北朝鮮が昨日、日本に核攻撃をかけた。こんどはこちらがお返しをするのだよ」

 オバノンはかつてない畏怖の念を感じながら、それから起きることをみつめた。戦闘員たちも、こんなことが起きるとは絶対に信じられないという表情でたがいに視線を交わしながらも、作業を着実に進めていった。

 トライデントD5弾道核ミサイルはこの種の原潜に数十年も搭載されてきた。1隻の発射管からは6発の核弾頭を射程6400キロの範囲で撃つことができる。歴史上、初のトライデント実射だった。

 「深度500フィート、副艦長、命令を再確認せよ」

 「はい艦長、D5、1発は即時発射、目標は北朝鮮のヨンビョン(寧辺)です。発射設定は完了、爆発は地上1万フィート。2発目はピョンヤン、発射設定は完了、爆発は地上1万フィートです。残り4基の弾頭はそのまま保管です」

 「了解した。では作戦開始!」

 オバノン少佐はミサイルが発射管から離れる轟音を全身で感じた。(つづく)

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/24 10:00)

 


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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-10 [Others]

(10)勝つか、負けるか

 【インド洋上空1万2000メートル 2009年9月30日】

 米空軍のB2戦略爆撃機は2機だけでもう4時間も飛んでいた。2飛行大隊合計8機のうち6機のB2が失われていた。乗員12人、米空軍の全B2戦力の3分の1近くが失われたのだ。そのうち2機は地上での事故で損害を受けたので修復は可能だという。他の4機は完全な喪失だった。

 「ボス、ディエゴガルシアまであと2時間です」

 マット・オバノン空軍中佐は副操縦士の計算をチェックした。

 「そう、2時間10分だな、ジェリー。新しい住まいが気にいるといいな」

 「いやあ、大変でしょうね。最も近いまともなバーまでは5000マイル、インターネットのつながりは悪いし、食堂は冷凍食品ばかり、参っちゃいますね」

 「そうだな。ところで新しい大統領は和平交渉をどう進めているかな」

 「さあ、しかし新大統領は戦時のクラターバック前大統領よりはましでしょう。でも戦争の最中に彼女が突然、辞任してしまったのには驚きましたね。後任の彼はだいじょうぶのようです」

 「発進直前に得た情報では米中間の停戦はきちんと実施されているようだ。北朝鮮は国家としてはもう消えてしまった。どうせ中国が支配するのだろうが」

 「そうでしょうね。傀儡政権をつくればいいのだから。日本も尖閣諸島を中国に提供し、完全に屈服しましたね。なにしろ第2の大都市が壊滅したのだから他に方法もない。米国はもう在日米軍基地をすべて放棄せねばならないですね」

 「そうだろう。でも私は日本の将来について考えさせられる」

 「どのようにですか」

 「日本はこんご第二次大戦後にしたようなことは絶対にしないだろう、ということだ。自国を非武装に近い形にして、米国を信じて頼り、防衛を任せる。だが米国は肝心な際に日本を守らなかった。日本の歴史を考えてみろよ。こんごの日本はやがて強力な自主武装の道を選ぶこと間違いなしだ」

 「核武装も含めてですか」

 「そうだよ、ジェリー。日本は中国に対してと同様に米国にも怒り心頭だ。10年後を想像してみろよ。日本人は日本に戦争を仕かけた中国と大阪が核攻撃を受けるのを抑止しなかった米国とを忘れはしない。日本の核ミサイルは米中両国に照準を合わせることになるだろうな」

 「まあ当面は私たちはインド洋のディエゴガルシア基地に着陸できるだけでも幸運ですね」

 「中国はいまや西太平洋の全域でしたいことをできるようになってしまった。米国はもうこんご長い年月、歓迎されないわけだ」

 「米国だけのミスではないでしょう」

 「ミスかどうかは意味がない。問題は勝つか、負けるか、だ。われわれは日本に有していたすべてを失った。韓国にはほんのみせかけだけの米軍が残ってはいるが、1年かそこらでそれも引き揚げることになる。中国が東アジアの全域を支配するのだ。その支配を阻む方法はいまはまったくないというわけさ」(以上、第5章「中国と日本の戦争」)

 本書はそのほかにも中国がその政治、軍事の固有の体質から台湾への侵攻、朝鮮半島での軍事行動、石油資源をめぐる米国との衝突などの各種の戦争を起こしうるとして、第8章までで各種の戦争シナリオを提示している。しかし同書の最大の主眼は日中戦争をも含めて、この種の仮想事態を現実に起こさせないことだと強調し、最終の第9章「封じこめ、関与、抑止、米中戦争を防ぐための努力」でそのための具体的政策を列記している。結論としては、最大の主眼は中国の軍事面での自由な威圧や侵略の行動を抑えるための抑止だと強調している。=おわり

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/25 10:00)

 


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