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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-7 [Others]

(7)北は韓国にも侵攻した

 【ホワイトハウス 2009年8月3日】

 中国の巡航ミサイルがついに日本に撃ちこまれた。日中の海上部隊は尖閣海域で戦闘を開始した。

 クラターバック大統領は日本の首相との電話会談で日本への同情と理解を伝えたが、行動はなにもとれそうもなかった。

 「首相、貴国にとっては手痛い打撃ですね。しかし死傷者は少ないようですが」

 「いや、巡航ミサイルは標的を巧みに選び、靖国神社が完全に破壊されました。ちょうどそのとき、大規模の参拝の儀式が催されており、数百人の民間人が殺されました。日本の海上自衛隊も莫大な被害を受けています。米国は日本の国土防衛を助けてくれるのですか。それとも日米安保条約はなんの意味もないのでしょうか」

 電話での会話は緊迫していった。

 「首相、私は米国の条約上の責務はよく知っています。しかし今回の事態はみなあなたの失態からではないですか。靖国神社を参拝して中国を挑発することは止めるよう告げたではないですか。中国側は米国の介入を許容しないと伝えてきました。首相、私はあなたに威圧されて、中国との戦争を始めるようなことはしませんよ」

 「大統領、もうこれは戦争なんです。中国側はいまこの瞬間も私たちを攻撃しています。弾丸や爆弾だけではない。ものすごいサイバー攻撃も受けました。日本の航空管制網や証券取引所、他の多数の電子システムが破壊されました。日本の経済ももう崩壊寸前です。軍事的にも中国が日本の防衛システムに同じような攻撃をかけてくれば、もう自衛隊も無力になります。中国はすでにわが国に降伏を要求してきました。この事態はもうとっくに戦争なのです!」

 「首相、米国としては国連の場で最大限の努力をしています。私たちはみな国連に頼らねばなりません」

 【北京・中央軍事委員会 同年8月10日】

 「主席、日本はまだ降伏しようとしません。わが方は日本の経済を機能麻痺にしました。政府機構も事実上の瓦解です。でも日本側はなお戦っています」

 胡金涛主席は人民解放軍の海軍将官からの報告を聞き、顔をしかめた。

 「米国はどう出てくるのか。日本側は日米安保条約の発動を宣言したのに、米国側は日本政府と話す以外、なんの行動もとっていないが」

 海軍将官は両手を広げて、答えた。

 「まさにナゾですね。でも主席が予測したとおりでもあります。しかし、わが方がもし沖縄を攻撃すれば、米軍も多大な損害をこうむることとなります」

 「それは賢明ではない。やはりまだ待つべきだろう。北朝鮮の金正月同志がすでに韓国に進攻したから、米国にとっても戦争状態となったわけだ。われわれが沖縄の米軍将兵を殺す必要もない。それに日本人どもはわが方がもたらした損害から回復することはできないだろう」

 「それはそのとおりです。だが日本人というのは頑固な民族です」

 「朝鮮からの戦況報告はどうか」

 「激戦が続いているそうです。米軍は増援部隊を本国から投入しています」

 「そうか--いまこそ沖縄の米軍を攻撃するときかも知れないな。米軍が他に注意を奪われている現状こそ好機となりうる」

 「はい、主席! そのとおりです」

 「よし、計画どおりに攻撃を開始せよ。米国はかなりの規模の軍隊を日本に駐在させている。それら部隊に決定的打撃を与えねばならない。そうすればあの大統領もさすがに行動を起こすだろう」(つづく)

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/22 10:00)

 


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