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近未来小説「SHOWDOWN(対決)」-9 [Others]

(9)作戦目標は北朝鮮

 【ホワイトハウス 2009年9月23日】

 北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の司令官はクラターバック大統領にさらに告げた。

 「大阪市での核爆発は北朝鮮から発射された核ミサイルであることを確認しました。間違いありません。核爆発の規模は10メガトンほどだと推定できます。大阪の市街は完全に消滅しました」

 「オー・マイ・ゴッド! どうしてそんなことが-」

 女性大統領は電話を切ると、文字どおり悲鳴をあげた。何度も悲鳴を断続的にあげ続け、大統領執務室に長身の男性が入ってくるのをみて、やっと口を閉ざした。

 「大統領-」

 「なんなのよ、将軍。北朝鮮が大阪に核攻撃をかけたことは知っているの?」

 背の高い男は国家安全保障会議の副補佐官だった。現役の海兵隊将軍の彼は軍服を着ていた。その軍服の胸から肩に数々の武勲を讃える勲章やリボンが飾られているのを女性大統領は初めてみた。将軍は太いが柔らかな声で応じた。

 「まさにそのために参上したのです」

 「日本は明日、降伏するそうです。将軍は知ってますか」

 「いえ、知りませんでした。だがわれわれのするべきことはまだ終わっていません。もう全員がそろっています。統合参謀本部議長、国防長官、国務長官、そして国家安全保障会議の全員です。大統領はフランクリン・ルーズベルト大統領をかねてから尊敬していましたね。ルーズベルト氏だったら、いまの状況下でどうするか、考えましょう。コーヒーはいかがですか。そして2人でちょっと廊下を歩きながら話しましょうか」

 大統領は大きなイスからやっと立ち上がった。

 「OK、ジム、そうしましょう」

 【西太平洋水深約300メートル 米海軍原子力戦略潜水艦「アラバマ」艦内 同年9月24日】

 ポーカー・ゲームはもう終わりそうだった。乗組員たちはまもなく就寝の予定だった。米海軍特殊攻撃部隊SEALのカリー・オバノン少佐はトランプのカードをまとめ、立ち上がって伸びをした。と、艦内に警鐘がひびきわたった。スピーカーから声が流れる。

 「全員、戦闘態勢につけ。ミサイル発射準備、全員、配置につけ」

 オバノン少佐の部下のヘッケルとジェッケルが少佐の顔をみた。

 「ボス、いったいなんですか」

 「わからない。艦長室にいってみる。二人はSEAL小隊を集合させておいてくれ」

 オバノンは艦長室へと走る途中、潜水艦が急上昇するのを感じた。艦長室脇の戦闘司令所にいた潜水艦長はオバノンがこれまでみたことのない緊張した顔つきだった。

 「オバノン少佐、まあそこで待機して、これからの一大作戦をみていてくれ」

 「なにをするのですか、艦長」

 「たいしたことはない。北朝鮮が昨日、日本に核攻撃をかけた。こんどはこちらがお返しをするのだよ」

 オバノンはかつてない畏怖の念を感じながら、それから起きることをみつめた。戦闘員たちも、こんなことが起きるとは絶対に信じられないという表情でたがいに視線を交わしながらも、作業を着実に進めていった。

 トライデントD5弾道核ミサイルはこの種の原潜に数十年も搭載されてきた。1隻の発射管からは6発の核弾頭を射程6400キロの範囲で撃つことができる。歴史上、初のトライデント実射だった。

 「深度500フィート、副艦長、命令を再確認せよ」

 「はい艦長、D5、1発は即時発射、目標は北朝鮮のヨンビョン(寧辺)です。発射設定は完了、爆発は地上1万フィート。2発目はピョンヤン、発射設定は完了、爆発は地上1万フィートです。残り4基の弾頭はそのまま保管です」

 「了解した。では作戦開始!」

 オバノン少佐はミサイルが発射管から離れる轟音を全身で感じた。(つづく)

 ジェド・バビン/エドワード・ティムパーレーク共著

 抄訳=ワシントン駐在編集特別委員、古森義久

(産経新聞 2006/10/24 10:00)

 


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